娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

神戸市役所って,敵だったんだ

神戸市記者会見が明らかにしたこと①

  2017年5月24日の事件以降,娘はさまざまな方々の支援を受けながら,辛い状況からの立ち直りに向けて頑張っていました。しかし,やりきれない憤りや苦しさに苛まれることも少なくありませんでした。子どもを相手にする業界人の中には「子どもを警察に突き出すとは」など,加害者が児童であるという事実を受け入れられない人の存在も少なからずあり,そうした人から娘が直接批判されたこともあります。これはこれで今後議論されるべき課題だと考えますが,娘のような「後遺症を負わされてもそう言えますか」という言葉だけはここで使っておきます。

 そうした感情的な人以上に,事件に関係する人々が事件で起きた真実を語ろうとしないことが大きかったと受け止めています。特に児童館指定管理者や施設設置者である神戸市は,一度も被害者から事件やその後の状況すら聞こうとはしませんでした。他人の「故意の行動」で傷を負う,命を脅かされるという明らかな犯罪行為という事実があったにも関わらず,そうした情報が世間に流されることはありませんでした。

 大人であれば普通に報道される行為が,なぜ報道されないのか。そのことに疑問を感じていた娘は,旧知の犯罪被害者家族の斡旋で報道関係者と会う機会を得ることになりました。彼女の知る事件現場とそれが起きた背景も含めて詳しく説明しました。同時に,加害者が少年であることや自身もこれから就職活動など未来を見付けていかなければならない立場であることを踏まえ,報道に際しては事件現場を「兵庫県内」とし,娘も名前を出さない形で進めてもらいました。そうした取材が進み,12月19日に報道されることになりました。

 ところが,神戸新聞が事件現場を神戸市内と特定して報道したことから,神戸市の課長がこの日に急遽,記者会見を行いました。しかしその内容は,被害者が持つ事件現場の事実と異なるもので,到底受け入れられないものでした。繰り返しですが,神戸市は事件以降,被害者に調査をすることはありませんでした。被害者に接触すら行わないまま,そうした行動に出たわけです。その発表内容は,指定管理者の情報にのみ依拠したもので,被害者をないがしろにする内容が含まれたものでした。一言でいえば「大騒ぎするほど大した問題ではないのだ」と。それゆえその2日後,私と娘も急遽,神戸市役所市で急ぎ記者会見せざるを得ませんでした。

 いずれにしても,市や指定管理者と被害者双方の認識の違いが,ここから明確になったともいえます。市役所が被害者のことは全く考えていない,被害者にとって市役所は敵対的な存在であることが明確になったことになります。どこかで,事件の現場や被害者の辛い状況の話を聞いてもらえるものだと考えていた私がバカでした。
 そこで改めて,市や指定管理者が事件の事実をどのように見ていたか,記者会見で明らかにされた内容をもとに,彼らへの疑問を整理していきたいと思います。