娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

神戸市や指定管理者が考えた事件現場

 

 

神戸市記者会見が明らかにしたこと②

  まず,神戸市役所や指定管理者が,どのように事件現場を捉えているかについても触れておきたいと思います。被害者が指定管理者と事件情報をやり取りする時間はほとんどありませんでしたし,神戸市役所には一度も会えずにきていますが,記者会見の発表内容は指定管理者・市役所双方の合意を踏まえて作られたものと考えられます。そこで,神戸市情報公開条例で入手した資料で見ていきます。平成29年12月19日,神戸市役所が行った記者会見のための資料の記載内容です。

 まず,「放課後児童クラブ(学童保育)での事故案件について」と題した資料の「1.経緯」のところには次のように記されています。
「平成29年5月24日(水)に放課後児童クラブ(学童保育)での外遊びの時間に引率職員  2名が児童13名を近隣の公園に向かう準備をしていた。当クラブでは、公園での外遊びを実施する際に、野球をしないルールとなっており、児童13名に伝達した。野球をできないことを不満に感じた児童1名が手にしていた野球用バット(ポリウレタン製、480g、75cm)を振りまわし、引率職員のうち1名をたたいた。」
とあります。

 また,もう一つの資料「補足資料」には,
「・事故発生は児童館の敷地内か→敷地外。児童館から外遊びをするために向かっていた公道上。被害職員が他の児童と立ち話をしているところを、背後から右耳の上を競技用ではないバット(長さ75cm、自重480g、外被ポリウレタン、芯材FRP)で叩いた。叩かれたことにより、一瞬被害職員が気絶するがすぐに気を取り戻した。近くにいた通行人等に助けられ館に戻り頭部を冷やし手当てを受けた。なお、指定管理者からの報告書では左耳の上に当たった旨の報告を受けたが、再度確認したところ右耳の誤りであった。」
とあります。

 神戸市役所と指定管理者は,事件に対して以上の認識を持っているということになります。

 まず,タイトルや文中で,「事件」ではなく「事故」と記されています。事件とすることでの反響の大きさを避けたかったのだと考えています。「一瞬被害職員が気絶するがすぐに気を取り戻し」と記すことで,被害者の症状が大したことではない,という印象を高めています。

 また,児童館作成資料では「殴った」と書かれていた表記が,ここでは「たたいた」という表記に変わっています。「殴った」と「たたいた」では随分印象が変わりますが,この表記変更が,いつ,誰によって行われたのか,ということも知りたいところです。

 なお,ここに記してあるバットに関して,18年3月の市会常任委員会で部長が,「柔らかい」と説明していることも付け加えておきます(ネット中継でこの言葉を聞いた瞬間,「そのバットで,あんたの頭,ぶん殴ってやろうか!!」と毒突いていた)。資料にバットを詳しく記載するのも,彼らの意図からくるものと考えています。18年5月に提出した質問への回答でも「製造元のカタログに記載があり」「市としても現物を確認した」としています。「現物を確認した」うえで「柔らかい」と表現する感覚をどのように受け止めるべきなのでしょう。警察が「殺傷能力がある」とし,被害者に後遺症が遺る傷をもたらした凶器をこのように表現できる神経が信じられません。要するにヒトデナシ!

 加えて,動機につながる話になりますが「野球をできないことを不満に感じた」とあります。ここも指定管理者と同じ理由になっていますが,指定管理者資料でも触れたとおり,「野球ができない」ことによる変化がどのようなものかまで説明する必要があると考えています。

 児童のちょっとした「不満」から起こされた「柔らかい」バットによるものとし,「事件」を「事故」と表現することで,世間に「大したことではない」ことを印象付ける操作が行われているわけで,被害者が認識している現場の風景とは大きなズレがあることはわかっていただけるかと思います。