娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

「加配」という措置

神戸市記者会見が明らかにしたこと⑥

 

 発達障害同様,記者会見の資料には出てこないにも関わらず,事件の再発防止に関連する内容が翌日の新聞に報じられています。それが「加配」です。

 この「加配」のことを報じた記事は翌日の神戸新聞にはありましたが,他の新聞にはこの文字そのものが見られませんでした。神戸新聞は「職員加配も防げず」との見出しをつけ,本文中にも「職員加配の対応を取っていた」旨が記載されていました。しかし,記者会見で配布された資料に「加配」はないことから考えると,神戸市内でのことなので地元・神戸新聞の記者が食い下がり,課長もこれに応じて強調して説明したであろうことから生まれた記事と推測しています。

 実はこの「加配」,児童館作成資料にも登場します。事件翌日,娘が非常勤講師をしている小学校の校長が,娘が治療のため帰郷することを児童館に電話で伝えていますが,ここになぜか「加配児」が唐突に出てきます。後に校長先生に確認したところ,そうした内容は記憶にないとのことでしたが,なぜこの文字がここに記されているのか,疑問を感じていました。また,同じ資料の6月5日の課長の言葉の中に「市としてもマンパワーの確保など、まだまだ協力していかないと」とあります。警察による調査当初、加配申請時の記録を提出していることも記されています。「加配」を経過資料に記すことで,「何らかの措置はしていた」ということを示したいのだと思います。

 神戸市役所に出した質問の回答にも「事件直後、障害児受入れによる職員の加配が当日適正に行われていたかどうかを検証し、職員が配置人数の点でも問題がなかったことを確認」とあります。

 この「加配」に関連する市役所の動きが,記者会見直後にもありました。報道翌々日の21日付で,担当課から神戸市内の児童館及び関係者に対し,「放課後児童クラブ(学童保育)での職員体制について」と題する通知が出され,「職員配置基準に基づく職員体制の確認」を求めています。しかし,それに対する報告様式は付されていません。「対応困難な事例」には相談に応じるともありますが,報告を求めない,それぞれが確認すればそれでおしまい,という性格の通知と考えられます。いずれにしても神戸市では,事件の要因として職員数の問題があったと考えている,もしくはそこが再発防止に必要な要素,と見ていることがうかがわれます。

 「加配」は,辞書では「規定の数以上の人員を配置すること」とありますが,ここでは障害など特別な対応を必要とする児童がいる場合,そうした児童の数に合わせて職員配置を増やしていることを指すようです。加害児童も「発達障害」なので,特別な対応の一人としてカウントされていたということを指すのだと思います。ただ,児童個々の特殊性を加味してというものではないようですので,専門職があたらねば,などということではないようです。とりあえず「頭数」を揃えておけば「良い」ということでしょう。市としては「そこはやった」という実績誇示であり,その質については指定管理者の問題という意味なのだろうと思います。

 しかし,数を増やしていても事件は起こりました。事件を起こした児童には小学1年時から指導の機会が特別に設けられていたことを,18年6月の市会委員会で市部長が答弁しています。課題を抱えた児童がいたものの,その児童に対する適切な指導機会を作れずにいた,というのが実態ということになるのではないでしょうか。それが事件として表面化したことをもっと重く考えなければならないと,私は考えています。

 そのように考えると,市内の児童館関係者への通知が,そうした数の問題だけを問うのだとすると,それは再発防止につながるものとしては不十分だったことになるのではないのでしょうか。これまでの状況は,膿を残したまま絆創膏でふさいでいるようにしか思えません。

 なお、ネタを一つ入れておきます。この12月21日付の通知文の本文冒頭に,「先日、市内放課後児童クラブ(学童保育)で発生した事案について」とあり,6カ月以上前のことを「先日」としています。「発生した」ではなく「発覚した」であれば,まだ意味としてはまだ適切ですが,そうした表現はしたくなかったのでしょう。神戸市役所の皆様は,総じて自分たちが使う言葉を吟味しない,言葉を軽んじている姿勢が見られますが,ここにもそうした姿勢が現れています。