娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

アイドル暴行事件で考えた

 最近ニュースとして取り上げられたAKB48の姉妹グループメンバー暴行事件の報道を見ながら,娘の事件対応と共通するものがあることに気付きました。

 この事件の発生は,昨年12月8日。アイドルグループNGT48メンバーの23歳女性が,公演が終わって帰ったマンションの自宅玄関前で男2人に襲われました。しかし,この事件が表面化するのは,1カ月後の1月8日です。襲われたメンバー山口某が,自らの動画配信サイトやツイッターに掲載してからとなります。その反響は大きく,さすがは世に知られたアイドルの場合は違うなとも思いました。そして,同系姉妹グループに属して高い知名度を誇る指原某も発言したように,反響の多くはグループの運営会社の対応を批判するものでした。
 私の関心も,やはりこの運営会社の姿勢にあります。特に,被害者の動画配信サイトの映像の中で「運営会社が対処してくれるといったのに何もしてくれない」的発言を聞いた時,組織を守ることを優先した腹黒さを感じてしまいました。何よりも,暴力事件が発生してから報道されるまで1カ月も時間が経っていて,そこに悪意が隠されていて,被害者は非常に苦しんだはずです。10年そこらで芸能界に確固たる地歩を得たグループとはいえ,運営部分の充実・成長はそれについていけなかったのだろうとも推測しています。被害者の配慮より組織防衛を優先し,グループを守るような言い訳をしながら,メンバーである被害者に事件の負担を背負わせている図式になっていて,被害者の涙ながらの告白がこの事件を象徴する画像に思えました。

 これまでこのブログで記してきたように,娘の事件では,事件現場となった松原児童館の指定管理者は救急車も警察も呼ばず,治療で神戸を離れていた娘の存在も軽く扱われます。施設設置者の神戸市役所には事件を軽く報告して事故としての早期収拾を図り,神戸市役所もその報告を鵜呑みにし,そのシナリオを受入れます。娘から被害届が提出され,警察による捜査が行なわれる前の話です。
 被害者の情報に関心を示さない神戸市役所に疑問を感じた私は,被害届提出後,神戸市担当課に直接電話を入れました。電話に出た係長に,娘の重い症状や就職活動ができずにいる厳しい状況を伝えました。しかし,5カ月後の記者会見で神戸市は,事件の状況を説明するに際し,加害児童が娘を「殴った」のではなく,「たたいた」と発表します。私の電話は「馬の耳に念仏」だったようです。神戸市役所は,指定管理者の報告に寄り添ったことで,思考を停止し,不作為を決め込んだようで,こちらもその後は組織防衛に走ります。原因究明をして再発防止,ということは考えなかったのでしょう。

 組織を優先して事件を隠蔽・矮小化する,被害者を置いてきぼりにする人たちをこのような形で見てきた私にとって,アイドルグループの運営会社には同じ臭いを感じます。暴力事件が起きてから報道されるまで時間が経っていたら,そこに悪意が隠されていると疑ってください。

 アイドル事件に話を戻すと,被害者が他のメンバーの関与をうかがわせる発言もあったこともあり,犯人捜しの方向に進んでいるようで,見聞きしていて嫌な思いになります。事件発生時以降の運営会社の対応が対応なので,真実が明らかにされるまでに時間はかかるでしょう。事件現場から時間が遠のけば遠のくほど,暗闇が広がってしまいます。

 しかし,多くの人に考えてほしいのは,まず被害者のことです。犯人への関心と同様に,むしろそれ以上に被害者に対する関心を持ってほしい,日常生活を壊されることの衝撃を想像してほしいと考えています。犯罪被害者に対する支援は,まだ歴史も浅く,大きくありません(’18/12/10『犯罪被害者という社会的弱者』)。事件があったらまず被害者に寄り添う考え方をする。そうした考え方が広まることを希望します。