娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市児童館で小2男児が職員を後ろからバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件以降のあれこれを記していきます。ブログ開設趣旨を,開設日2018年10月3日に記載しています。私は,久保田昌加(仮名)

少年事件と触法事件

 娘の事件が,なかなか被害者の思うような形になっていない要因として,加害者が児童だったこと,少年法が関係することも少なからず影響しているように考えています。

  刑法では,14歳未満の少年は心身未成熟ということで,責任無能力者=刑事未成年者として扱われことになっています。責任能力がないので,刑罰法令に違反する行為を行なっても「犯罪」にならないことになります。少年法の中でも20歳に満たない者=少年が刑罰法令に触れる行為を行なった場合は刑事事件として扱われますが,14歳未満の場合は「刑罰法令に触れる行為を行なった少年」とされます。犯罪ではないけれども刑罰法令に抵触した少年ということなのでしょう。そうしたことから犯罪少年ではなく「触法少年」という呼び方になるようです。
 触法少年は,犯罪をしたわけではないので,逮捕や勾留はもちろん,捜査をすることもできません。警察は捜査をすることはできませんが,「調査」をすることはできます。これを「触法調査」と呼び,少年法の中にあります。つまり少年法の中でも,14歳以上の犯罪少年と14歳未満の触法少年では別個の規律が定められ,触法少年の事件は少年による刑事事件とは異なる扱いになります。そのことで,小2児童の触法行為を受けた娘の場合も,通常の犯罪や少年犯罪とは異なる難しさが残されているように感じています。
 少年法では,刑罰法令に触れる行為を行なった少年は,警察による捜査をもとに「家庭裁判所の審判に付すべき少年」となりますが,14歳未満の場合は触法調査の結果によって児童相談所に対する通告も行なわれ,児童相談所による判断で家庭裁判所へ送致した時だけしか審判は行なわれません。

 触法少年に対する措置には児童相談所の判断が大きく影響し,家庭裁判所の送致ではなく,児童福祉法上の行政的な措置で済ます判断をすることが多いようです。少年法では「故意の犯罪行為により,被害者を死亡させた罪,死刑,無期,短期2年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪の場合については,原則として家庭裁判所に送致しなければならない」とする条項があります。逆に考えるとそれだけ重大でなければなかなか送致の対象にはしないようにも感じられます。
 小2児童にバットで殴られた娘は,事件以前から加害児童による暴力行為が繰り返されていたなどもあり,家庭裁判所に送致して暴力行為の認定を受けたうえでの厳正な対処を希望し,児童が送致された神戸市の児童相談所に家裁送致の要望を出しましたが,叶えられませんでした。児童相談所では家裁送致は必要ないと判断したわけですが,予想通りとはいえ残念な気持ちを持っています。

 いずれにしても,少年法児童福祉法が関係する触法少年事件では,裁判所への送致を決めるのは,一般の刑事事件のように検事が行なうのではなく児童相談所長です。触法少年に対して,児童福祉法に定める行政的な措置で済ますのか,家庭裁判所に送致するのかという決定権は,児童相談所長が握っているということです。
 そして児童相談所が決定権を持つということは,どうしても福祉的措置が優先されることになるということでもあると考えます。法制度そのものが,過ちを起こした少年の矯正や環境整備,健やかな成長及び発達を目的としたものである以上,優先されるのは少年になります。そのこと自体は当然として,私たちが悔しい気持ちを持つのは,そこに被害者に対する配慮がほとんど考えられていない感じを受けているからです。加害少年が矯正と福祉の世界に囲われて世間から距離を取るのに合わせるように,被害者の方はその存在を世間から忘れられていくようにしか感じられないのです。

 娘を傷つけた児童の保護者が,これまで主体的な謝罪行動もしてこなかったことは以前も記しましたが(’18/10/28『親は何考えているんだ』),被害者側としてはそこに大きな疑問と不満を感じています。そして,そうした保護者の行動を許容する要素がこの制度には隠されているように感じられてならないのです。