娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。苦しむ日々が続いています。事件について考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)です。

生徒の暴力を隠したいの?

 先月末,生徒に暴行されて重傷を負った教諭が,市などに慰謝料を求める訴訟を大阪地裁に起こしたとの報道がありました。教師に対する暴力を巡って学校側を相手に訴訟というのは極めて異例,ともありました。暴行した生徒側ではなく,学校側であることに注目してください。この報道には,少年の暴力に対する学校の姿勢,娘の事件との共通性など見逃せないものが含まれています。

 まず,事件の概要ですが。2013年12月に大阪・四條畷市立中学校で,給食時間中に教室の扉を蹴った別のクラスの1年生の男子生徒を40代の男性教諭が注意したところ,顔を殴られたり膝蹴りを受け,鼻の骨折などの重傷を負いました。しかし学校側は警察や消防に通報もしませんでした。この生徒は過去にも問題行動があったにもかかわらず,職員会議では「校内で処理しろ,警察を呼ぶな」との指示がされたといいます。また,休職を余儀なくされたことから公務災害の申請を依頼したところ,校長は「保険で治療しないか」「目撃者がいないので書類が書けない」などと拒否し,3カ月後まで手続をしなかったといいます(その後公務災害は認められたようです)。教諭は,問題行動があった生徒への厳正な措置を怠り,公務災害申請を妨げたなどを理由に提訴に踏み切ったようです。これに対して市教育委員会は,「学校は最善を尽くし,対応に問題はない」としているようです。私には見飽きたせりふですが。

 最初にこの報道を目にした時,余りにも娘の事件と重なる部分が多く,目を疑うほどでした。これまで何度も記したように,娘の場合もバットで頭部を殴られて昏倒したにもかかわらず,事件現場の児童館には救急車もパトカーも来ませんでした。殴った児童も以前から問題行動を繰り返していましたが,適切な対処は取られぬままでした。雇用者の児童館指定管理者は休業中の娘の生活支援を一切しませんでした。それら指定管理者の対応を,施設設置者である神戸市は「適切である」と評価しました。そのほかにも多々ありますが,ここではわかりやすい共通点だけにしておきます。

 ここで私が特に記しておきたいのは,暴力への向き合い方です。昨年8月,娘はNHK総合TV『クローズアップ現代+』に出演しました(’18/12/12『クロ現もAERAも取り上げた!!』)。その時に一緒に出演した元校長が「学校で起こったことは学校で解決する責任を負っている」とし,「警察の力を借りるのは教師の負け」的な発言をしました。教育という自分たちの専門的な仕事を聖域化し,その世界に閉じ籠もった狭い考え方だと私は思っています。暴力は暴力,人として絶対許されない,越えてはならない一線を越えた行為です。暴力の現場を見極めることと,暴力を振るった者を立ち直らせることは一緒ではないと考えます。教育の世界が暴力の検証をできることに秀でているとは思えません。そこ警察でしょ,警察の領域でしょ!!負けを認めて先を考えるべきだと思うし,四條畷の事件で「校内で処理しろ,警察を呼ぶな」との発言があったとすれば,もう呆れるしかないですよ。

 今年に入って虐待報道が続きました。いじめに関する報道もよく見かけます。そうした報道の際に使われる統計の数字を見ると,虐待やいじめに関するここ10・15年ほどで大きく伸びています。児童生徒による職員への数字は把握されていませんが,同じように伸びているのだろうと推測しています。急に増えたというよりこれまで意識されなかったものが意識されるようになってきたから,「しつけ」とか「可愛いがり」のような弁解に隠された行動が暴力として意識されるようになってきたから,暴力に気付いたからと考えています。ハラスメントもそうした流れの中にあるのだと思います。子どもの暴力についても「子どもだから」と容認するケースも少なくなかったはずですが,容認できる場合とできない場合があるはずです。そこに被害者が存在する場合は,絶対に容認してはならないはずです。

 今問われているのは暴力との向き合い方なのだと思います。それもごく平穏な社会の中で隠されるように息づいてきた暴力との向き合い方。そのように考えると,四條畷の訴訟は「異例」ではなく「先行事例」としてとらえられていくのだろうとも考えていますし,そうあってほしいと思います。だからこそ,その動向には多くの人に関心を持っていただきたいと考えています。

 話が変わりますが。娘が同じような境遇にある方々と,今月1日から『児童・生徒暴力被害者の会』を立ち上げました。【児童・生徒暴力被害者の会 @bouryoku_higai】児童・生徒からの暴力や労災隠しなどに悩む先生や専門職の方々の会ですが,関心を寄せてくれる方々も歓迎です。暴力被害者にとって厳しい環境がある現状を,少しでも変えていきたいという思いから始められました。こちらにも関心を寄せていただきたいと考えています。