娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

バットの硬さが影響する話なの?

 事件の凶器となったバットについて,神戸市と指定管理者は,これまでバットが「軟らかい」ことを強調してきました。そのことに対する疑問です。
[質問] 前回質問に対する回答の中で、「あたかも競技用バットで殴ったととられかねない報道があり、説明会見を行いました」とありましたが、『競技用バット』とはどのようなバットで、被害者殴打に関する影響はどのように違うということでしょうか。
[回答] 新聞等でも「少年野球で使われるようなバット」と表記しており、少年野球の「競技用バット」は、通常金属バットや木製バットを指すと考えております。一方、本件で使用されたバットは、競技用ではなく、指定管理者から提出されたバットの製造元であるエバーニューのカタログ内でも、「バットの表面はポリウレタンで柔らかい」との記載がなされていることから、競技用の金属や木製のバットとは違うということを表現したもので、事実を説明しました。

[所見] 前回の回答に疑問を感じたので('18/11/26『凶器のバットは「やわらかい」のか』),改めてその理由を問う質問をしました。
 回答は,メーカーが「柔らかい」とカタログに記しているバットだから,記者会見で説明したかったという話です。柔らかいのは表面に塗布されたポリウレタンだけのことで,バットの芯材が強度を誇るFRPであることはどうお考えでしょうか?

 このバットが「軟らかい」という話も,出所は指定管理者と考えています。これまで何度か記してきましたが,事件1カ月後に娘と私が指定管理者を訪ね,警察への協力を求めた際に,口数の少なかった指定管理者が強調したのが,「バットはプラスチック」「児童は発達障害」という二つでした。この二つは神戸市の発表内容の中核となっていて,神戸市の情報源の少なさを証明する話として私は受け止めています。

 神戸市や指定管理者は,これまでバットが「軟らかい」ことを一貫して主張し,合わせて「偶発性」を強調してきました。偶然起こったことでバットも軟らかかった,大袈裟にするほどのことではない,としたいのでしょう(’18/10/10『神戸市や指定管理者が考えた事件現場』)。

 しかし,忘れてならないのは,児童は背後から娘の頭を狙ってバットを振り回したという事実です。バットにかなり強い力が込められ,脳に後遺症が残るような強い打撃が行われたという結果です。故意に行われたもので,偶発的なものではないから,児童は警察から児童相談所に通告されたのです。こうした場合に,バットが金属か木製かポリウレタン塗布か,ということがどれほど衝撃の大きさに影響するのでしょうか。金属か木製ではないから,被害者の後遺症は軽く済んだとでも言いたいのでしょうか。

 このバットの硬・軟の問題について,被害者に一生警戒を要する甚大な結果をもたらした打撃力で考えると,別の見方が出てきます。後遺症が残されるような打撃が行われたということは,凶器が軟らかければ軟らかいほど,バットに込められた力は強かったことになります。バットの軟らかさが強調されればされるほど,児童の暴力に対する強い意思が浮かび上がってくる,加害児童の「暴力性」が強調されることになるのです。そうした要素を考慮しても,それでも神戸市は「軟らかさ」を強調したいのでしょうか。

 このバットの話もそうですが,神戸市の説明・回答は些細な部分に終始します。バットの話はその典型といえます。後遺症が残るような暴力が行われたという結果をどう考えているのか,少年が起こした行為をどう受け止めているのか,それにどう向き合ったのか。施設設置者としての覚悟がうかがわれません。その姿勢にこそ問題があると考えています。
 昨年3月の市会常任委員会で,答弁に立った部長が「持っていたバットなんですけれども,おもちゃではないですけれども,軟らかいです」と答弁しています。公の場で,公の立場にある人のこの発言が,被害者の心をどれだけ傷付けたか想像できますか,神戸市さん!