娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

神戸市の業務姿勢を「タコツボ仕事」と呼ぶ理由

 前回,私が「第2期」と呼ぶ被害届提出から記者会見までの,神戸市の仕事振りについて記しましたが(’19/08/12『影に隠れ,視野の広い判断はできない』),中でも彼らの情報との接し方について「タコツボ仕事」と書いたこともありますので(’18/10/18『神戸市 被害者の取扱い方』),そのタコツボっぷりを書いてみたくなりました。

 まず,これまでの質問・回答の中に,同じ市役所内の他部署との関わり方に関するやりとりがあるので,そのあたりをみてみます。
①神戸市は組織の中に,少年法に規定する触法行為(14歳以下で刑罰法規に触れる行為)による保護も行う児童相談所を有しています。娘の事件は,小2男児がバットで人を殴った事件なので,当然その児童の処遇について情報交換があったものと考えていました。しかし,警察が動き出すまでそうした形跡がないことに疑問を感じ,被害者による被害届提出以前に,市内部で相談を行わなかったのか質問したところ,例によって質問の核心には答えずに一般論を並べ,「市は見守っていた」とする回答になっていました(’18/11/05『児童はなぜ野放しにされたのか』)。
②記者会見における「発達障害だから暴力」発言を確かめたく,神戸市が設けている「発達障害者支援センター」の担当とも情報の共有を図ったのかとする質問をしましたが,これも回答はありませんでした(’18/10/13『「発達障害だから暴力」という発表』)。これを再度問い合わせた際,「発達障害者支援の関係の部署も含め、内部で情報共有を図り対応しております」との短い回答がありました。そんな簡単な回答ならば,なぜ最初の質問の際に回答できなかったのか逆に疑問に感ずることになりました(’19/05/09『言い訳のあとは疑問符回答ですか』)。
③娘は支援者のアドバイスを得,神戸市が行っている「犯罪被害者等生活支援補助金」をいただいていますので,犯罪被害者支援のあり方について「当該事件を例」に説明を求めましたが,「当該事件」には触れずに一般論に終始する回答がありました。書きようによっては被害者支援の実績を強調できる記述もあり得る場面ですが,それはありませんでした。

 ここに見られるのは,こども青少年課が庁内関係各課との情報共有を図ることなく,言葉の世界に留まっている,縦割りの中に安住していることがうかがえます。だから「タコツボ仕事」と呼んだのです。幅広い業務に関与する地方行政の中にあり,縦割りを超えることは考えてはいけないのか,総合的な判断をできる人材が関与していないのかわかりませんが,公の姿としては偏っているようにしか思えません。(指定管理者のほかにも,偏った状態を支えている存在がいるのかもしれません)

 このタコツボ仕事のこども青少年課が頼りにしたのが,指定管理者の情報です。それは事件半年後に行われた記者会見に象徴されます。記者会見を開く理由は,その日報道されることになった事件の内容が,被害者側に立ったものであることを気にしてのことだったはずです(’19/04/26『バットの硬さが影響する話なの?』)。私が記者会見で注目したのは,「加害児童は発達障害」「バットは軟らかい」の2点が強調されたことです。1カ月間の郷里での入院・療養を終えて神戸に戻った2017年6月下旬,警察署で被害届提出の相談をし,その翌日指定管理者を訪れて警察への調査協力を求めました。被害届という指定管理者にとっては予想外の行動を取ったことで,会話の多くを私が主導する形で面会は進みましたが,この中で指定管理者がこだわったのが「加害児童は発達障害」と「バットはプラスチック」という2点でした。小2児童による殴打事件という衝撃をできるだけ薄めたい指定管理者が見出した事件の要点がこの二つだったと考えられます。それが記者会見の発表内容にも重なるのです。それゆえ,児童が「発達障害だから暴力」の失言まで飛び出すことになったと考えられるのです(’18/10/26『まともに答えず報道のせいに』)。自ら現場の情報を持つことなく,指定管理者の情報に頼るしかない神戸市の弱点を表現してくれた2点だとも考えています。

 いずれにしても,「大ごとではない」という指定管理者のシナリオに乗っかった内容を発表した記者会見が意味するのは(’18/10/10『神戸市や指定管理者が考えた事件現場』),隠蔽・矮小化に関して指定管理者との共犯状態にあったということだと考えられるのです。

 なお,この記者会見に用意された資料では,「児童相談所への通告時間」に関し「児童相談所への通告は警察が行なったものなので不明。被害職員の親族が警察に届けを出されたのが6月27日であったためその後と思われる」と実に他人事的な表記が見られます(’18/10/27『コトの重さをいつ意識した?』)。前記①とも関連しますが,同じこども家庭局に属す児童相談所に関連する情報がこのような表記になるのは,縦割り仕事にどっぷりと浸かったゆえなのか,指定管理者に任せっ放しの延長によるものかは分かりませんが,市としての当事者意識の希薄さを見事に現わしています。