娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

2018年3月神戸市会・文教こども委員会

 被害届提出から記者会見までの時期については,神戸市の現場担当であるこども青少年課を主体にしたものと私は考えており,この期間を「第2期」と呼んできましたが,この状況が少し変わる機会が訪れます。2018年3月22日の神戸市会の常任委員会・文教こども委員会です。より上位にある幹部職員が登場して記録や言葉の重みが変わるからで,それ以降現在までを私は「第3期」としています。

 2017年12月の事件報道後,事件に関心を寄せてくれた小林るみ子市会議員と娘が接触する機会を得,事件時からその後までを聞いていただきました。小林議員はそれをもとに,この委員会で質問してくれました。答弁には,こども家庭局の山本こども企画育成部長が立ちました。委員(議員)からの質問と部長の答弁を整理すると,次のようになります。

①事件の経緯を求めた質問に,部長は概ね次のような答弁をしています。年度が変わって精神的に不安定だった加害児童が野球を止められた不満からバットで「叩いた」,バットはおもちゃではないが軟らかい,施設の車で脳専門医・総合病院に連れて行った,と。この答弁内容は神戸市が開いた記者会見での説明内容とほぼ同じだろうと考えられ,娘の見た現場とはかなり異なる風景(’18/10/05『娘が見た事件現場』)を語ったことになります。また,救急車を呼ばなかったことに納得していない被害者と指定管理者間で協議中,とも答えていますので,被害者が独自に開いた記者会見の情報は持っていたと思います。ただし,被害者と指定管理者が「協議」した事実はありませんので,それはここでも強調しておきます。
②頭部を殴られて意識を失った被害者に救急車を呼ばなかったのはおかしいのではとの質問に対し,「脳専門の大きい病院が近かったので施設の車で運んだ方が早いという判断から対応」と答弁しています。しかし1時間半も過ぎてから連れて行ったことを,事件直後に対応したかのように言うのはいかがなものか,というのが私の意見です。
③加害児童が「発達障害だから暴力を振るった」とする発表・報道があったことに関する質問に対し,「個別のことは差し控えたい」などと避ける言い方をしたためさらに突っ込まれると,「一般論」として「マスコミの良心」を持ち出すなどの答弁をしています。さらに「そういった表現をしていないマスコミもございました」とまで言われると笑うしかないです。このやり取りの中では「私は発達障害のお子様という表現はしないと思います」との答弁もありましたが,部長ではなく部下がそう表現したしまったことについてはどうお考えなのか,というのが質問の核心ではないのでしょうか。言い訳で核心を答えないという得意業(’19/07/14『問いと答えがかみ合わない!』)をここでも発揮しています。
④休職状態の被害者の補償に関しての質問に,「指定管理者が労働災害で対応を検討し,申請が通るかどうかというところ」と答弁しています。しかし労災制度で考えれば,診療が継続中での休業補償はありませんので,指定管理者への再確認が必要だったはずなのですが。
⑤加害児童のことをどのように把握しているか質問されると,「児童館・学童保育施設と学校が共同で様々な話合い」をしていると答え,「今現在話合いをしているか」と問われると「事件の当座は」と答えています。当座より後について触れていませんので,当座の時点で終わった話にしていたことが明らかだと受け止めています。
⑥委員から被害者と会って話をする必要を問われると,「一般論」として「リスク分担を決めているので,まずは指定管理者が対応」と答え,「指定管理の運営の中で不手際があったかどうかも検証」した旨の答弁をしています。しかし検証を言うのであれば,「一般論」ではなく現場の状況を説明すべきで,その具体的な検証内容をこそ述べてほしいものです。「問題のどこに齟齬があるかを指定管理者に確認して必要であればそのような話合いも」との言葉もありましたが,被害者に対する接触はありませんでした。いずれにしても指定管理者に押し付けておきたい姿勢にしか見えないのですが(’19/07/29『「指定管理者」という隠れ蓑』),最近の児童館で起きた事件とは真逆の対応であることは指摘しておきます(’19/08/09『神戸市の児童館でまた,それ暴力』)。

 部長の答弁には,時々「えー」とか「あのー」と入って歯切れの悪さを感じたり,担当課からのメモが渡されたり確認したりと,予想外の質問に苦慮している様子がうかがえ,何とも心もとない答弁という印象を受けました。その理由は,被害者の情報を持っていないから。質問者が被害者からの直接情報を得て質問しているにも関わらず,答弁者は指定管理者が作成した事件当初の情報,それも矮小化された情報しか持ち合わせなかったからと考えています。本来,現場の情報をもとに答弁すべき立場の人が,「一般論」で答弁せざるを得なかったのもそうした実情を物語るものと受け止めています。

 被害者が被害届を出して以降のどこかの時点で,市が被害者に接していればこんなことにはならなかったことを部長は気が付いているのだろうか,とネット中継を見ながら私は思っていました。公としての立場を見失ったツケだと考えています。