娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市児童館で小2男児が職員を後ろからバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件以降のあれこれを記していきます。ブログ開設趣旨を,開設日2018年10月3日に記載しています。私は,久保田昌加(仮名)

「発達障害だから暴力」の不見識

 昨年末の12月23日,東京・池袋のマクドナルドに並んだ行列で,23歳の専門学校生の男が2歳男児の腹を蹴るという事件報道がありました。私がこの事件に注目したのは,男について「発達障害を患っている」との話が出ていたことにあります。娘の事件でも加害児童について「発達障害だから暴力」との発表がなされたことに対して,私たち親子は異議を述べた経緯があるからです。

 まず池袋の事件について。男は男児を蹴った直後,男児の父親に取り押さえられて警察に現行犯逮捕され,2日後に傷害容疑で送検されたようです。加害者側弁護士は,男は感情のコントロールができず「泣き声がうるさくてイライラ」し,子供に向かって「うるさい,黙れ」ということもなく反射的に蹴ってしまったと考えられること,それまでは物に当たることがあっても人に当たるのは初めてと家族が語っていることなどを説明したようです。その前段として,発達障害を患い,療育手帳障害者手帳を取得している旨の話をしています。
 この事件に関するネット上の反応では,「発達障害者はヤバい」的な,発達障害者だから暴力を起こした的反応が多々見られるようです。こうした短絡的で根拠のない言説にはあまり振り回されないように気を付けたいものです。蹴るという暴力行為を許容するつもりはありませんが,検察がどのような判断をするのか注視したいと考えています。

 発達障害については統一された概念はまだないとされています。古典的には自閉症を中心とする発達に偏りがみられる症状を指していたようですが,自閉症アスペルガー症候群・広範性発達障害などを包括する「自閉症スペクトラム障害」という考え方が登場してから範囲が拡大したとされます。それを裏付けるように,1970年代に自閉症は人口1万人に約4~5人とされたものが,現在では自閉症スペクトラム障害は児童100人あたり1人の障害と認識されるようになり,対象がかなり増えている状況があります。こうした流れの中で2004年には「発達障害者支援法」が成立して支援施策が国や地方自治体において進められている状況もあります。以上はすべて受け売りですが,原因がはっきりしていないにしても,社会的に大きな問題として認識されつつあることをより多くの人が知るとともに,「発達障害だから暴力」のような根拠のない話にはくみすべきではないと考えます。

 私が発達障害に関心を寄せるのは,娘の事件は発生してから半年以上経った2017年12月19日にやっと報道されましたが,これに合わせる形で行われた神戸市の記者会見で,担当課長が「加害児童が発達障害だから暴力を振るった」的発表をしたことにあります。この日夕方のテレビニュースで課長が笑いがちに説明している場面を録画で見ながら妙な違和感を覚えました。加害児童が事件以前から暴力的な行動を繰り返していたことを見ていた娘は,単純に「発達障害」ととらえる見方に疑問を持っていましたので,より強い違和感を持ったようです。

 娘の事件の中で「発達障害」の言葉を耳にするのは,これが2度目でした。事件1カ月後の2017年6月末に娘と二人で児童館指定管理者を訪問し,「警察に被害届を出したので捜査への協力」を申し入れました。事件を事故で言いくるめていた指定管理者にとっては予期せぬ申し入れだったこともあり,話は私が主導する形で進みましたが,数少ない彼らの主張が①児童は発達障害,②バットはプラスチック(=軟らかい)の2点でした。神戸市課長は,記者会見ではこの2点を強調したようです。実は神戸市役所の中には発達障害者支援担当も置かれているようなのですが,そうした部署からの情報収集もなかったようで,その後の私どもからの質問でもそうした姿勢がうかがわれました。要するに神戸市の児童館担当課長は,指定管理者の情報にのみ依拠し,起こった事件を精査する意思もなく,庁内情報すら考えられない,要は情報に対する鈍感さをお持ちの方のようです。
 この後,翌年3月の市会常任委員会で課長の「発達障害」発言に関する質問が出た時,答弁に立った部長はだいぶ答えに窮し,「私は発達障害のお子様という表現はしない」と述べています。私はそれをネットで見聞きしながら「あんたじゃなくて課長が言ったかどうかよ」と毒づいていました。この時の答弁は一般論に終始し,滑稽さすら感じさせるものがありましたが,発言ミスには触れぬよう何とかボカそうとしている姿勢ありありでした。

 いずれにしても,「発達障害だから暴力」という発言は,多くの発達障害者をおとしめる発言だと思っています。発達障害者支援事業に取組む神戸市は,本当にこの発言を許容できるのでしょうか。何よりも,発達障害者に対する謝罪が必要ではないのでしょうか。