娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

全国一斉休校と学童保育

 年初から新型コロナウイルスの感染が拡大し続け,未曾有の危機的状況なんだろう,と想像しています。政府は,3月2日から春休みまで臨時休校とするよう全国の小中学校・高校・特別支援学校に要請することを決め,2月27日に首相がこれを表明しました。異例の対応ということで,教育現場のみならず保護者の職場や生活近辺での混乱がさまざまな場所で生じていることが報じられています。全国一律もその要因にあると思いますが,この表明前に文部科学省から出されていた「感染時に地域全体での休校検討」を全省的に膨らませる形が良かったのでは,などと思ったりしています。ただ首相表明によって,国民の多くが感染の恐ろしさを具体的に意識するという効果が大きかったことだけは確かだろうと考えています。
 この政府の休校要請に対して自治体では,域内の感染状況から感染者が出るまでは休校しないとか,休校期間を2週間に区切るなどの判断も出てきているようですし,共働き家庭や企業への影響から学校の空き教室を開放したりなどの工夫も出てきているようです。地域の実情をどのように反映して取り組んでいくのか,自治体の実力が問われている面もあるようにも感じています。

 厚生労働省では,働く親への影響を少なくするため,留守番の困難な幼い子供や低学年の児童を保育園や学童保育(放課後児童クラブ)で受け入れるよう全国の自治体に要請を出しました。厚労省学童保育に関する連絡は,感染の予防に留意するとともに,開所時間について夏休みなどにおける開所時間(原則1日8時間)に準じた取扱いを求めるものとなっていますので,職員の緊急確保に追われている状況があるようです。学童保育では利用する子供が増えて過密化や施設の大型化が進み,以前から指導員が慢性的な不足気味で,昨年末に「学童待機、最多」の報道もありました(それ以前から地方分権改革の中で,義務付けている職員配置を緩和する方向にあり,私などは「質」の確保に懸念を覚えます)。また,児童の受け入れに際しては個々の児童の事情に合わせた配慮も求められているでしょうし,働く親からの問い合わせも殺到しているようですから,学童保育事業者は一層慌ただしい状況の中で緊急的な対応を求められているようです。

 今回の措置で,学校より小さな施設で行われている学童保育に小学生が殺到することになると,小学校以上の人口密度になるわけで,人との接触を避けるために行われた休校が,教室よりも過密な場所に押し込めることにもつながりかねない,という根本的な矛盾が残されています。私はそこに学童保育の「質」の部分をプラスして考えます。
 私がこれまでも何度か学童保育について触れてきたのは,娘がバットで殴られた事件が学童保育で起きたからです。同じ神戸市では昨年5月,やはり学童保育中の小学2年女児が,同じ小学校に通う複数の男児に服を脱ぐよう強要されたり,体を触られたりするなどの被害を受ける事件が起きています。学童保育の現場の中に暴力的な行動をしている児童もいるわけですが,二つの事件ともその後は全く見えない形にされたままにあると思っています。娘の事件でいえば,神戸市は娘から事件の聴き取りもしていませんから,対策もないはずです。同じ子供を扱う世界でも,教育の世界ではいじめ防止対策推進法が存在しますが,学童保育の世界では児童による暴力の存在そのものを認めようとしない見方があると思っています。数的には稀少な話をしていますが,当事者としては考えざるを得ない話になるのです。

 今回の休校に関して文科省は,教育委員会が教師に職務命令を出すことで,小学校教師が教師身分のまま学童保育の支援にあたれるとの見解を示しました。そのような形で学童保育に入っていく教師には,ぜひ学校と学童保育における子供への対応の違いなどについて発信してほしいと考えています。