娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

教育長はこの回答案を読んだのか

 前回,娘の事件に対する神戸市教委からの要望書回答に対する疑問の一つを記しましたが(『校長先生の報告はガセネタにされたのか』),メインの疑問を記しておきます。

 神戸市教委への要望書の提出は,加害児童が通う小学校長への面会を希望するものでした。そのことへの回答は次のとおりです。「在校児童に対する指導の範囲外で発生したもの」なので,「校長が面会してお話しさせていただくことは難しいと考えられます」というものでした。要するに,児童館の学童保育で起きた事件なので,学校としての指導の範疇には入りませんということでしょう。縦割り社会ということを考えればあり得る考え方かもしれませんが,在校児童が暴力行為に及んだことをそんな簡単に切れるのでしょうか。
 しかも,同様の事件と比較すると,上記の考え方とは違う対応があることもわかります。2019年5月に神戸市兵庫区の児童館で起きた事件です。まず,昨年報道されたこの事件について記しておきます。児童館での学童保育中に,小学2年女児が同じ小学校に通う複数の男児に服を脱ぐよう強要されたり,体を触られたりする被害を受けていました。翌日になって児童館職員会議を経てから母親に報告されていますが,女児の家族はその後転居・転校を余儀なくされたということです。この事件が発覚したのは3ヶ月後の8月でした。報道の文面になりますが,小学校からは「重大ないじめ事案と捉え、関わった児童を指導した」と説明があったようです。
 娘の事件と重ねて考えると,いじめ防止対策推進法に合致する事件であれば対応するけど,少年法の「少年の刑事事件」には関与しないということになるのでしょうか。それとも,私どもの要望・回答から1年経過した時点では方針が変わったということなのでしょうか。私にはこの違う対応が理解できません。

 上記回答に関する疑問をもう1点,記しておきます。「難しいと考えられます」という末尾表記,一読した時から違和感を覚えています。教育委員会と学校の関係,両者の制度的・社会的関係から考える指導的立場,つまり上下関係の話です。教育委員会は学校に対して,教育内容の専門的事項を指導する立場にあるでしょうし,何よりも教員の人事権を持っています。教委と学校の上下関係は明らかです。しかし先の表記は,まわりの顔色をうかがうような言い回しに感じられます。私が教育長であれば,こんな腰の定まらない表現は認めません。ここから私が感じたのは,要望書の回答は市教委上位の人まで協議してのものではない,ということです。
 教育委員会への要望書は,神戸市長宛での質問状と同じ日に提出し,翌月同日に回答を受けています。神戸市からの回答は,誠意のない内容に加え,様式的にも末尾に「神戸市こども家庭局こども青少年課」と入ったもので,課内処理であることが明記されています。神戸市の『公文書管理規定』にも適合しない処理を平然と行っています。私ども親子からの質問に,「正式な公文書として回答するのもふさわしくないほど軽いものなので課からの回答で十分よ!」と言っているようなものです。この件は昨年2月に行った再度の質問状提出の際にも,口頭で課長に指摘しました。もちろん反論などあろうはずがありませんでした。
 市教委の回答は,様式的には市規程にそったもので,「教育長」名による公印押印の回答になっていますが,内容的には市こども青少年課と同様に誠意の無さを感じさせるものです。なので,この「難しいと考えられます」表現で考えると,「課名」で回答した市こども青少年課との連絡を持ちつつ,同様レベルで良いと対処した結果の文書でしょう。

 さらに考えたのは,私どもから要望書を提出した時期のことです。この頃の神戸市教委は垂水区の中2女子生徒自殺に絡んで首席指導主事による隠蔽が発覚し,全国的に報道された頃です。大きな事件の影での私どもの要望ですから,それまで同様に大きく扱わない,上位にあげて確認するほどのものではないとする担当側の判断,はやりの忖度があったうえで返されたものだろうと推測しています。

 いずれにしても,市や教委の事実に向き合おうとしない姿勢は明らかです。そんな教委が持っている雰囲気の中で,前回記した勤務校の校長先生の報告はないがしろにされたのだろうと考えるのです。被害者にとって事実を知ってほしいという思いは果たせぬまま,誠意のない対応によって「二次被害」にさいなまれる日々が続きますが,「事実と向き合わない」姿勢は「暴力を許容する」ことです。最近の報道では,昨年の東須磨小学校で教諭間いじめ事件で,加害教諭のうち懲戒免職以外の2教諭は市教委事務局に配置換えとなるとありました。私は,濁った水にさらに濁った水が流れ込むような印象を覚えました。