娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。4の付く日に更新しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

神戸市への署名提出

 娘は8月3日,児童生徒から職員への暴力に対する現状を訴えた署名について,ご支援をいただいている神戸市会議員の方々同席のもとで,神戸市に提出しました。児童館で小2男児にバットで殴られるという暴力事件にも関わらず,救急車も警察も呼ばれない理不尽に対する異議申立てです。1月に文科省厚労省宛に提出したものですが(『児童生徒からの暴力に関する署名』),その後の追加署名もあったことから,事件の原点である神戸市に提出することとしたものです。これに合わせて,父としての意見を求められたので,作成したのが以下の文章です。言いたいことはたくさんありますが,2点に絞って整理しました。私の頭の中の現在地です。そのまま掲載しますので,意をお汲み取りいただければありがたいです。

1.救急車を呼んでもらえなかったことについて
 娘は救急車で運ばれたと思っていたようですが,実際は呼ばれていませんでした。頭に衝撃を受けた場合は迷わず救急車というのが私の常識です。頭をバットで殴られたのです。児童館では,娘が周りの人と会話ができたからとか,支えられながらも歩いて児童館に戻れたからなどと救急車を呼ばなかった理由を述べていますが,明らかに脳震盪が疑われるべき状況です。児童館が脳震盪を知らなかったのか,何らかの意図があってのことかは不明ですが,私は大いに疑問を感じています。娘は当時の記憶を持っていないので,意識消失の状態にあったのは明らかです。娘の現在の治療の中心も脳震盪の後遺症です。最初の病院でのCT検査で異常が出なかったとされましたが,脳震盪は映像では確認できないので,受傷の状況を付き添った人がどのように伝えたかが,より重要とされています。しかし娘に付き添った人は事件現場を見ていた人ではありませんでしたし,1時間半も経過してから病院に連れて行くような人がどのように詳しく説明できたのか疑問を覚えています。
 救急車が呼ばれなかったことを知ってから,神戸市で保有する施設や機関へ「頭部を受傷したら迷わず救急車を」ということを周知してほしいという思いを持ってきましたが,それを果たせずに来ています。是非,そこは実現してほしいと考えています。

2.被害者に優しい社会をめざす地域について
 加害側が児童なので犯罪という言葉をここでは使いませんが,事件により娘は被害者となりました。事件で受けた衝撃は娘の心身を大きく傷つけました。脳震盪の後遺症や生命の危機を過ごしたことによるPTSDなどにより就労にも支障をきたしています。そんな娘を見ながら,私は被害者のことを考えるようになり,被害者は社会的弱者と考えるようになりました。社会的には,2004年に制定された「犯罪被害者等基本法」が成立し,被害者の支援にかかる基本事項が示されるようになりました。前文には「これまでその権利が尊重されてきたとは言い難く,十分な支援を受けられず,社会において孤立することを余儀なくされてきた」とありますが,娘の姿がそこに重なります。
 暴力行為にも関わらず,加害児童保護者からはこれまで謝罪を受けていません。児童館指定管理者は,被害者の療養や支援は一切行ってくれませんでした。被害届提出という児童館が描いたシナリオにない行為に対する報復ではないかと私は推測しています。施設設置者である神戸市は,指定管理者と異なる事件情報の保持者である被害者から事件の状況を聞くことはなく,指定管理者の情報に依存するばかりでした。事件現場にいた被害者から,直接事情聴取が行われなかったことを不思議に思っています。そのような不十分な事件情報のもとで,類似事件の再発防止は可能なのでしょうか。加害児童側にとっても疑問を残すことになるのではないのでしょうか。
 娘は,「被害者として扱われていない」という悔しさにさいなまれることが少なくなかったと考えています。前記「基本法」前文には「犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ」ともあります。また2013年に制定された「いじめ防止対策推進法」でも「いじめを受けた児童等の生命及び心身を保護することが特に重要」とされています。加害側に重点を置いた「少年法」との違いがここに表されています。こうした事件対応がこれからの方向性なのだと考えます。被害者を含む事件の全情報を踏まえ,俯瞰的に状況を検討するのが公の在り方になるのではないかと考えます。しかし,これまでそうした対応をしていただいたとは思っていません。
 神戸市は犯罪被害者等支援条例を有する先進的な都市だと認識していますし,娘もこの条例によるご支援をいただきました。しかし,この条例の担当課はともかく児童館担当課の方々には,この条例が持つ目的に則した対応をしていただいたとは思っておりません。今も悔しさを抱かされたままにあります。これからは,被害者に優しい都市となるべく努力をしていただきたいし,娘の事件についても被害者の立場になって検討していただきたいと考えます。