娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

エピソードの中に見えた本音

 前回,事件2時間後に受診した最初の脳外科の対応に伴う疑問に記しました。労基署ではこの病院と,この病院から紹介されて当日夜と翌日の2回の聴覚障害を診察した病院との2カ所しか労災の対象としないと決定しました。もちろん私は納得できないのですが,労災の対象とするとした最初の病院に関連して,気になる思い出があるので記しておきます。

 事件後4カ月の2017年9月末の出来事です。神戸市は「犯罪被害者等支援条例」を制定しており,これに関連して犯罪被害者への「生活支援金」を支給しています。被害者支援関係者のアドバイスもあり,娘は事件後に申請をしていました。しかし資料が不足とのことから提出に出向く娘に同行し,市役所の支援金担当を訪問しました。
 最初の提出時に対応した若い女性職員に挨拶をすると別室に通され,その上司と思しき中年男性職員も同席しての話し合いになりました。女性職員はネームカードを下げていましたが,男性職員はネームカードも下げず,自ら名を名乗ることもないまま椅子に腰かけました。人に会う際のマナーに関しては?のようで,意識しての行動だとしても褒められた態度ではないでしょう。その態度のまま,いきなり「児童館で殴る蹴るはよくあること」と話し始めました。私ども親子に「大した事件ではないでしょ」と言いたかったようです。
 私が児童館で救急車を呼ばなかったことに関して消防庁のホームページの話をすると,「消防庁の話まで出さなくても呼ぶのが当たり前」とし,指定管理者の事件対応への疑問を述べると「法人は自分たちを守るために意見を崩すことはない」と見下ろしたような物言いをします。
 最初の病院に対する疑問を述べると,「あの病院は脳外科としても実績があるし,救急指定病院として知られている。今回の対応も適切なはず」と話し,私が疑問を呈すること自体が間違っている的な言い方をしたので,以前受診した神戸市の著名病院の医師を思い出して「○○病院の先生とは違う見解ですね」と返すと黙りこくってしまいました。
 その後は私たちに気遣いをするような言い方に変わり,「弁護士の先生は頼んだのか」とか「市の施設で起きたことなので,市としても適切な指導をしなければ」と発言したりします。市児童館担当との連絡について聞かれたので,直接電話を入れたり労基署へ送った資料の写しを送っていることを説明すると,最後は「こども家庭局にも適切に対応させる」旨の発言がありました。

 改めて振り返っておきます。口火を切った「児童館では」という発言は,児童館担当との情報共有が行われていることを示しています。児童館担当は自分で情報収集をせずに指定管理者の情報に100%依存していますので,病院に関する情報も含め,指定管理者や労基につながる情報と考えるべきなのでしょう。
 それはそれとして冒頭の発言「殴る蹴るはよくあること」は,内容で考えると児童館での暴力行為を容認しているようにも受け取れるもので,それが神戸市の児童館に対する認識だとすれば,問題発言と考えます。おそらく庁内の担当同士での情報交換に際して本音が飛び交ったのでしょうが,外部の人と話す場合には口にしてはいけない類の言葉のはずです。冒頭で発せられたということが彼らの問題意識の無さを示しています。当初から私たちを下に見るような姿勢でしたから,その辺は思慮もなく発せられたのでしょう。
 また,最初に受診した病院に対する認識は「肩を持つ」言い方だと受け止めましたが,私が切り返した言葉に返答できなかったという反応は,情報を持ち合わせない,情報を整理できない人にはありがちな反応といえます。児童館担当から吹き込まれた情報しか持ち合わせなかったのだと考えています。ただ私が注目したいのはここです。彼の発言は,市役所児童館担当や指定管理者,労基署には共有されていた情報と考えられます。この推測を延長して考えると,労基の判定はこの時点ではかなり固まっていたという見方ができるのではないかということです。以前にも書きましたが(『労基署の対応を振り返って考える』),この時点では既に労基の判断方針は固まっていたと考えるのです。娘が労基の担当といさかいを起こした要因もそこにあると考えるのです。

 以上,核心は余話にも残るという話です。先に記した支援金は,年を越えて翌年1月に受給しています。高額ではない支援金に4カ月以上も時間をかけていることにも疑問を感じていますが,支給を受けた側なのでこれだけにとどめておきます。