娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

またぞろスポーツで暴力が

 またスポーツの現場での暴力が報じられました。最初の報道が4月21日だったので,これからまだまだ報道で取り上げられる機会が続くのでは,と思います。スポーツの,それも高校という教育の場での暴力ですので,少なからぬ課題を抱えた事件と私は受け止めました。まずは事件の内容を整理しておきます。

 舞台となったのは,熊本県八代市の私立・秀岳館高サッカー部です。寮の中から投稿されたと思われる動画に,30代の男性コーチが3年生部員に殴る・蹴るの暴力を振るう様子が写されていて,「秀岳館サッカーコーチ生徒暴行」のタイトルが付いていたといいます。この情報が寄せられた学校では,取材に対し「事実関係を確認次第、対応したい」とし,警察も事実関係の確認を進めているというのが報道の主なところでした。
 その後の報道では,警察が学校を訪れて3人が事情聴取を受けたこと,被害届が出されていないこと,暴行を加えた疑いのある30代コーチは授業を受け持っていない同校職員だったことなどの情報もありました。同校のサッカー部は2014年度に全国高校サッカー選手権に出場し,現在は熊本県1部リーグに所属する強豪校との報道もありましたし,部員が約200人と聞くと確かに大きな運動部であることは理解できます。ただ,サッカー部関係者が「暴行を受けているのはサッカー部員で、コーチから部員への暴力行為は日常茶飯事」と話しているともありました。昭和の東京五輪の時代の,精神論や鉄拳制裁を思い起こさせるような行為は,人間教育・育成に沿った指導が求められる時代にはそぐわないことを自覚すべきではないのでしょうか。チームの監督もこの暴力行為があったことを認めているとのことですが,そのことに対するコメントは見当たりません。スポーツ指導者として,自らの指導方針との関係をどのように考えているかなどの見解は明確に表明すべきだと考えます。

 また,これまでの報道の中で,学校関係者が「警察の事実確認を待っている状況」としながらも,「どんな事情があれ、暴行、暴言は許されない。絶対にダメだと教職員には再三、指導をしてきました。事実であれば再発防止とともに、誠心誠意、生徒の心のケアに全力を尽くしたい」と話したともありました。真っ当な見解ではあるのですが,私がここで気になったのはこれが学校関係者のコメントであって,校長の見解ではない点です。これまでのところ,学校トップの姿が見えていません。学校内の情報収集整理を進めている途中という理由かもしれませんが,自らが管理する学校の欠陥が露呈した以上,事件が確認された時点から,トップとして世間に対してコメントを出すことが必要ではないのでしょうか。長崎県の私立高校いじめ自殺事件でも,学校としての状況説明が遅れたことがありましたが,こうした姿勢について制度的な不足があるのでしょうか。その点も含めて問題行動として検証されるべきだと思います。俗にいう「危機管理」の上でも問題ある姿勢だと考えます。

 いずれにしても,暴力的な行為はもっと排除されなければならないはずです。スポーツの世界でも,科学的かつ教育的配慮による取組みが数多く行われているようですので,狭い世界で完結するような考え方での指導とは決別し,少年を成長させる指導,選手の一生を支える指導を行ってほしいものです。スポーツを好きな人は圧倒的にたくさんいるはずです。勝った時だけ狂気して喜ぶだけでなく,実際に取り組む人たちの現場で起こった問題にもきっちりと関心を向けておくべきだと考えます。暴力を是認することは,大袈裟な言い回しにはなるかもしれませんが,究極の暴力である戦争の容認につながることを考えるべきだと思うのです。日々報道されるウクライナ侵攻が辛くてなりません。