娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

パワハラという「いじめ」

 このブログでは何度か「いじめ」について取り上げてきていますが,それらは子供が関わる形で事件化し,報道されたものをもとに書いたものでした。しかし実際の子供間におけるいじめも,子供が自然といじめる行動を取るのではなく,何らかの形で大人の行動から身に付けたものだと考えています。したがって「いじめ」についても,大人の「いじめ」を見て子供がその行動を真似るものと考えておくことが大事だと考えます。大人の間にいじめが存在するから子供もそれを真似ると私は考えるのです。
 大人のいじめと書きましたが,職場でこれが起こるとパワハラパワーハラスメントという暴力になります。パワハラについては概ね次のように考えられています。同じ職場で働く者に対し,職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景として,業務の適正な範囲を超え,精神的・身体的苦痛を与える,または職場環境を悪化させる行為,というあたりが定義的な捉え方になるかと思います。今週,パワハラに関連する報道がありましたが,そのことをもとに考えてみたいと思います。

 報道されたのは,青森県の住宅建築会社「ハシモトホーム」で起きた事件です。この会社に勤める40代の男性社員が,上司から「お前はバカか」などとするメッセージを繰り返し送り付けられていたようです。その後大勢が参加している新年会の席で,勤務成績を表彰する「賞状」を病気の「症状」ともじり,「大した成績を残せずあーあって感じ」などと侮辱する内容を書いた紙を渡されたとされ,この「症状」なる紙も写真で報じられています。
 新年会で使われた「症状」は,前述の上司の課長が余興として企画し,文面も考案したとされていますが,見事なパワハラの証拠としか思えません。この課長が自殺の原因を作っていたことは明らかです。この「症状」について社長は,「毎年の懇親会で表彰の一環として渡していた。他の人にも渡していたので,亡くなった男性の不調の原因になったか疑問」と取材に答えたようですが,自殺を引き起こした証拠として考えると,経営者として「疑問」を感じさせるコメントと言わざるを得ません。何よりも,行われたことが「余興」の域を脱して言葉の暴力につながっていることを感じていないようです。会社の持つ暴力的な空気は今もそのままなのでしょう。課長の暴力だけでなく,社長の暴力に甘い姿勢が自殺につながったと考えるべきです。

 男性は新年会翌月の2月にうつ病を患い,自殺しています。青森労働基準監督署は,上司のパワハラで追い詰められて重度のうつ病を発症し,自殺の原因となったと労災認定したようです。うつ病発症前1カ月の時間外労働が過労死ラインに近い76時間余だったようです。これが4年前の事件ですが,今回の報道は遺族が会社と社長に対し損害賠償を求める訴えを起こしたことというものでした(パワハラの場合,規制できる法律がないので,損害賠償による訴訟を手段として取らざるを得ません)。
 遺族の代理人弁護士は,「謝罪などを求めて会社側と交渉したが,会社に法的責任はないとしている」と交渉決裂の経緯を説明したようですが,初期の交渉の段階で謝罪がないというところに,経営者の感心できない人柄が現れているように思っています。課長や社長は,言葉による暴力に対する感性をおそらく持ち合わせていないのでしょう。人や命に対する謙虚さの不足が,こうした時に表面化することを忘れてはならないと思います。