娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

またまた「救急車を呼びたくない人たち」

 またぞろ,呼ぶべき救急車を呼ばなかった愚か者たちに関する報道がありました。この事件を少し考えてみます。

 今月初め名古屋市内の小学校で,5年男児が顔面を強打して顔の骨を折る大けがをしました。休み時間に教室で友人をおんぶして遊んでいて転び,顔を床で強く打ったということです。男児は担任教諭に「ものが二重に見える」と伝え,さらに保健室で左目の痛みなどを訴え,ここでも吐いていました。この時の状況について男児自身が取材に答えていて,モノが二重に見えたり,吐くほど気持ちも悪かったので病院に連れて行ってほしかった,早く病院に行きたかったと述べています。

 この報道の中で私が疑問を覚えたのは学校側の対応です。男児に対応した養護教諭は,目の腫れや変色が見られなかったことなどから保冷剤で目を冷やす処置をし,母親に迎えに来るよう連絡したようです。連絡を受けた際に母親は,「学校から病院へ連れて行ってくれないのか」と尋ねたものの,学校は来校を求めたようです。母親は事故から約30分後に学校に駆けつけますが,その時点でも男児はおう吐を繰り返していたと言います。母親は「自分の子供を見て、手で触って様子を見た時点で吐いているのに、苦しそうに吐いているのに、なんでこの状況で救急車を呼ばないんだと。病院に連れて行かないんだってことは思いましたね」と取材に答えています。報道では「学校側は『給食を食べたばかりで、吐いているのかも』と説明し、危機感はなかった」とするものもありました。学校側に緊急性の認識が不足していることは明らかです。
 そんな学校側の姿勢に危機感を感じた母親が自ら119番通報したことで,男児は病院に救急搬送されることができました。病院に運ばれた男児は,眼窩底骨折と診断されて緊急手術を受け,全治約3カ月とされています。母親は医師から「『命に別条はありませんが、放っておくと大変なことになりますよ』と言われゾッとします。(放っておいたら)どうなっていたんだろう』と語っています。学校側の対応がずさんを示す一端です。

 吐いた=頭部への衝撃があったことを考えると,頭部への影響を考えるべきなのですし,救急車の出動を依頼すべきでしょう。しかし学校側の考えはそこまで及ばなかったようです。ケガをした男の子が「先生から『目を打ったのに、何で吐くの?』と怒った感じで言われた」と述べていますが,これが養護教諭の発言だとすると問題です。基本的な脳損傷に対する知識が,決定的に欠けていると言わざるを得ません。子供たちを相手にする業務ですから,教職員全体が頭部外傷に対する知識をもっと持つべきだし,児童生徒の健康保持や増進を職務とする養護教諭であればなおさらと考えるからです。
この事件について名古屋市教育委員会は会見を開き,「学校から速やかに救急搬送することが適切だったと考えております。申し訳ございませんでした」と救急車を呼ばなかったことについて謝罪し,判断が適切でなかったとして学校を指導するとしたようです。当然です。

 今回の例は,多くの人の救急車に対する意識の一端を示したもののように感じられます。もっと救急車に対しては身近な必需品的な位置づけとし,「迷ったら呼ぶ」判断でも良いと考えています。もちろん,今もってタクシー代わりに救急車を呼ぶ迷惑な輩がいることもありますが,「緊急」とは何かについて日頃から考えておくことの必要性を感じます。救急車に関しては,「#7119」救急安心センターに相談する方法もありますので,そうしたことも頭の片隅に抑えておいてほしいものです。
 救急車を呼ばないという背景には,被害者の状態を軽く見てしまう人たち,事件を大袈裟にしたくない人たちがいることは,繰り返し強調しておきます。