娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

2020-01-01から1年間の記事一覧

暴力を許容する組織,謝罪しない人

今月の報道で気になったものを二つ取り上げておきます。 一つは防衛大学校のいじめ訴訟を報じたものです。2013年4月に防衛大に入学した男性が,入学以降に上級生から顔を殴られたり,アルコールを吹きかけられて体毛に火を付けられたりする暴行を受けて15年…

コロナ禍という命の不安

2020年の私たちは,本当に大変な時代を経験していると思っています。新型コロナウイルスという目に見えない恐怖による生活の急激な変化。年初の頃は中国のこととして語られ,旧正月時期の中国人観光客や大型クルーズ船で,一気に緊迫した国内問題と化したと…

事件を取り巻く人たちの思惑

先月気になった報道から。2017年4月に長崎の私立海星高校で,当時2年の男子生徒がいじめを苦に自殺する事件があり,これに関連する学校側や学校を指導する立場にある県教委の対応に対する疑問を報じたもので,テレビでは目にすることがありませんでしたが…

核心に関わる言葉が聞きたかった

娘は事件の際,頭部をバットで殴られて昏倒したにも関わらず救急車が呼ばれなかった,ということに悔しい思いを持っていました。そうしたことから事件等に際しては,被害者優先の考え方のもとに救急車が呼ばれるようになってほしいという思いから,署名活動…

事件は学童保育で起きたのですが

2017年6月,郷里での1カ月の療養から神戸に戻った娘は,自身の生活が狂わされた事件に関し,全く語られない調査も行われない状況への疑問から,児童館に関係する人たちへの接触を進めます。事件を知っているのか,どのように受け止めているのか,再発を防…

いじめの背後に横たわるもの

先月下旬, 2019年度に全国の小中高校など約37,000校を対象に行われた問題行動・不登校調査に関し,文科省による結果公表が報道されました。いじめは前年度に比べて6万8千件増の61万2千件余で過去最多だったとしています。また被害者が心身に重大な被害を…

事件を俯瞰的に眺めると

政権が変わったとはいえ,「前政権の継承が私の使命」とする新首相のもとでは疑惑も同様のようです。モリ・カケ・桜と多くの疑問を残しながら主が交替したら,今度は日本学術会議の任命拒否という理解に苦しむ問題が起き,「総合的・俯瞰的」という文言も飛…

救急車を呼びたくなかった,のでは

昨年の秋,ラグビーワールドカップで日本中が盛り上がっていました。一戦々々を心待ちして楽しみました。若い頃見た観客の少ないラグビー場とは隔世の感一入でした。記憶する30年ほど前のラグビー戦には「魔法のやかん」が存在しました。衝突で頭を打って倒…

性暴力への視点の甘さ

このブログでは,娘の事件に限らず様々な暴力について考えたことも記していましたが,これまで触れてきていなかった性暴力について少し考えてみます。 きっかけは自民党女性衆院議員による「女性はいくらでもウソをつけますから」発言があったという9月26日…

「記録がない」ことが意味するもの

安倍首相が辞任表明してから,報道面では政権期間を総括する内容が続き,政権の疑惑に関する記事の時に必ず登場するのは公文書改ざんに代表される公文書の管理でした。前代未聞の改ざんは勿論ですが,公が記録することの意味が小さくないことは処々で報じら…

凶悪な事件を起こした少年をどうするのか

15歳の少年による,何とも凶悪な殺人事件が起きました。大きく報道されましたが,なぞっておきます。事件は8月28日の午後7時半頃,福岡市の商業施設で,この施設に友人と遊びに来ていた21歳の女性がトイレで,包丁で10カ所以上を刺され,病院へ搬送され後…

現場で少年法はどのように意識されているのか

今月初め,法務省は少年法の見直しに関する要綱原案を法制審議会の部会に示したとする報道がありました。選挙年齢や民法での成年年齢が20歳から18歳に引下げられることに合わせ,少年法の対象年齢を従来の「20歳未満」とするのか引き下げるのかが見直しの最…

「子供に手錠」で考える

先週12日のテレビニュースで,8歳男児に警察官が手錠をかける映像が流されました(『非情 涙の8歳に手錠』)。アメリカ・フロリダ州での2018年12月の出来事で,男児が教師をたたいたとして学校が警察に通報したものです。映像では,警察官が男児に「君はど…

神戸市への署名提出

娘は8月3日,児童生徒から職員への暴力に対する現状を訴えた署名について,ご支援をいただいている神戸市会議員の方々同席のもとで,神戸市に提出しました。児童館で小2男児にバットで殴られるという暴力事件にも関わらず,救急車も警察も呼ばれない理不…

事件の被害者に対する想像を

世の中の流れとして,犯罪被害者のことをもっと重く考えなければならなくなっていますよ,という話を繰り返してきましたが,今月もう一つ,そのことを押してくれるような報道を見つけたので記しておきます。 今月6日に最高裁小法廷であった判決です。まず事…

加害者対応だけで済む時代ではない

前2回,事件との向き合い方に変化が出てきているのではないかということを書きました。少年が関係する事件について,20年ほどの時間を踏まえて考えれば,という話です。 一つは2004年に制定された犯罪被害者等基本法が成立です。事件によって日常を奪われ,…

少年犯罪被害者の不利

法務省の犯罪被害者に関するホームページに次のような記載があります。犯罪の発生から始まり,警察による捜査と検察官への送致,検察官による起訴・不起訴の決定,起訴の場合の裁判所での裁判という犯罪者が事件を起こしてからの一連の流れが記され,その中…

少年事件をこじらせる大人たち

先日,気になる事件を見つけました(渋井哲也『愛知県豊田市で下校中に大けが なぜ被害者である姉妹が転校を余儀なくされたのか』)。読みながら既視感を覚えるものがありました。 まず事件現場から。2018年10月下旬,愛知県豊田市内にある小学校の一斉下校…

コロナ禍に衝撃的な事件がまたも

前回,少年による父親刺殺事件のことを書きました。父親による虐待が子供による事件を引き起こした,暴力の再生産が行われた,一人の人間に暴力が棲みつく過程が垣間見えるよう感じた,と。またまた家族間における衝撃的な事件が起きました。兵庫県宝塚市の…

暮らしの変化で暴力の場が増えている

新型コロナウイルス感染のピークは過ぎようとしているようですが,自粛を求められる辛抱暮らしはまだまだ必要なようです。疫病の流行が日本史の中では何度も繰り返されたと言われますが,現代人にとっては未経験の話ですし,自然災害ほど意識もしていなかっ…

4回目の「5月24日」

2017年5月24日午後4時の神戸市・松原児童館前,娘が小2男児にバットで殴られました。それから3年経ちましたが,被害者が置かれている状況は何も変わっていません。この1年もまた,事件の事実が語られないまま時間だけが過ぎ,歯がゆい思いはそのままで…

事件を「誤解」で済ませようとしているのか

5月は娘が事件に遭った月です。疑問がそのままの3年目でした。私たち親娘が事件に疑問を持ったのは,児童館の事件対応に疑問を感じたことから始まります。暴力事件なのに警察が知らなかったり,頭をバットで殴られた人がいるのに救急車が呼ばれなかったり…

少年の暴力はどこで生まれるのか

また少年による殺人事件が起こりました。今月23日に最初の報道があった事件です。3月下旬,岐阜市内の橋の下で暮らす81歳のホームレスの男性と一緒に暮らす女性の2人が,何者かに石を投げつけられてその場から逃走,約1キロほど離れた路上で女性が振り向…

少年をどこまで守るつもりなのか

森友問題で自殺した財務省職員と妻について週刊文春に掲載し続け「森友スクープ」として話題になっている大阪日日新聞の相澤冬樹氏が,先週『「罪を反省していない少年を社会に放り出すのか?」遺族が叫んだ事件と近畿財務局 赤木さんの事件の共通点』と題す…

暮らしが変化を強いられる時

新型コロナウイルス,本当に大変なことになってきました。病原体は,飢餓・戦争・自然災害と並ぶ人類生存の長い間の課題と聞いたことがあります。人類の命を脅かす未知のウイルスが世界中を急速に広まり,その勢いのまま私たちの暮らしに迫ってきました。報…

自分の暴力性を自覚できないとは

昨年1月に千葉県野田市で起こった児童虐待死事件に対する裁判員裁判の判決が,先月19日に千葉地裁でありました。小4女児の我が子に対し,父親が食事や十分な睡眠を与えず,浴室で冷水シャワーをかけ続けるなどして死亡させたという衝撃的な事件でした。 父…

「公」が歪んできているのではないか

このブログには不相応な大きな話かもしれませんが,気になっている話です。 今月18日,首相と官僚の関係を物語る森友学園を巡る公文書改ざん問題に関連し,自殺した職員の妻が国と改ざんを指示した佐川元国税庁長官を提訴した件です。提訴に合わせて自殺した…

教育長はこの回答案を読んだのか

前回,娘の事件に対する神戸市教委からの要望書回答に対する疑問の一つを記しましたが(『校長先生の報告はガセネタにされたのか』),メインの疑問を記しておきます。 神戸市教委への要望書の提出は,加害児童が通う小学校長への面会を希望するものでした。…

校長先生の報告はガセネタにされたのか

前回・前々回と,加害児童への措置(『改めて加害児童への対応を振り返る』)や彼が通う小学校の対応(『娘の事件,加害児童の小学校はどう受け止めた』)について書きましたが,神戸市教委との関係を語る前に,もう一つ記しておくことがあります。 娘は,事…

改めて加害児童への対応を振り返る

前回,神戸市教育委員会に触れる前提として,加害児童が属する小学校の対応に触れましたが(『娘の事件,加害児童の小学校はどう受け止めた』),合わせて事件後,加害児童をどのように対処したのかについても改めて整理しておきます。 事件は2017年5月24日午…