娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

虐待という暴力について

 このブログでは,身近な場所で起きている暴力について,時々の事件などに関連させたりしながら記してきています。身近な暴力と書きましたが,定義的にはあいまいなので,読んでいただいている方とはとらえ方が違うかもしれません。最近の記述ではスポーツ系の事件もありました。今月に入ってからの報道で目にすることが増えたのは,「虐待」でした。言葉としては「残酷に取り扱うこと」「むごい扱いをすること」を意味しますが,報道で取り上げているのは「児童虐待」です。

 児童虐待に関しては,「児童虐待の防止等に関する法律」が2000年に制定されていて,一般的に「児童虐待防止法」と呼んでいます。この第2条に児童虐待の定義があります。簡単に整理しておくと,18歳に満たない児童に対して保護者が,身体に対する暴行・わいせつな行為・心身の発達を妨げる行為・著しい暴言や拒絶的な対応・ドメスティックバイオレンスなどの行動を指します。親子の間で行われるこうした暴力を減らすことを目的とした法律ということになります。
 しかし時々虐待による事件報道が繰り返されてきていますので,難しい現実があることを考えざるを得ません。春以降そうした現実を反映する形で昨年の児童虐待に関する統計報告が報道され,最近は県レベルでの昨年の統計発表も続いています。

 警察庁が発表した2021年の犯罪に係る統計では,児童虐待の疑いで児童相談所(児相)に「通告」された18歳未満の子供は10万8千人余で,前年に比べると1%の増とのことです。このうち虐待事件としての摘発(検挙)は前年比1.7%増の2170件で,過去最多のようです。虐待の内訳を見ると,子供の目の前で家族に対して暴力を振るうなどの「面前DV(ドメスティック・バイオレンス)」や子供に暴言を浴びせるなどの「心理的虐待」が8万3百人ほどで最も多く,全体の7割を占めています。次いで「身体的虐待」が1万9千人余,ネグレクト(育児放棄)などの「怠慢・拒否」が8千2百人余,「性的虐待」が3百人弱となっています。これらのうち,摘発されたケースの内訳では「身体的虐待」がこれまた最多の1千7百余件で全体の8割とされています。
 警察庁はこれらの数字について,通告児童数・摘発(検挙)件数とも増加傾向にあると分析しています。また,このような家族など私的な関係の中で発生することの多い暴力(犯罪)は,その性質上から犯罪としては潜在化しやすいことが指摘されていますし,新型コロナウイルス禍で外部の目が届きにくくなっていることも指摘されています。子育てをうまくできない孤立した親が増えているということのようです。
 なお,これら摘発されたケースの加害者は2千2百人ほどになっていますが,実父が47%を占めています。実母は26%,養父・継父は17%,内縁の男性は5%となっています。男性の暴力性が非常に明確に現れています。男性と暴力の親和性は古くからのこととは言え,私は男性であることの恥ずかしさを思わざるを得ません。

 虐待という暴力はあくまで「児童」に対する「保護者」の行為で,もっとシンプルには「子」への「親」の行為です。弱い者を守らなければならない者が逆に攻撃している,暴力を振るう側に回っています。親子の関係になぜ暴力が介在することが問題なのです。
 ごくありふれた平凡な親子の中で育った者として,報じられる虐待という暴力行為はなかなか理解できません。親が子に対してなぜそこまで暴力行為ができるのかを理解できないし,理解したくない気持ちも強いです。虐待という闇を抱えた家族が増えている,そのことだけは確かなようです。虐待の統計は1990年から取り始めたとされていますが,それ以来年を追うごとに数字が伸びているといいます。虐待にしても,いじめにしても,もともと人が持っていた暴力性なのかもしれませんが,それをコントロールできる生き物でありたいものです。