娘をバットで殴られて

2017年5月24日,神戸市松原児童館で小2男児が職員を背後からバットで殴る事件が起きました。その職員は私の娘です。事件についてのあれこれ,世に伝えられる暴力などについて考えたあれこれを記しています。私の名前は,久保田昌加(仮名)。

神戸市担当への不信感

 前回は,娘の事件が神戸市役所の中では現場担当レベルの裁量で済ませられる扱いにされていた=軽い扱いの事件にされていたことを神戸市会の委員会質疑から確認しました。神戸市が大きな視野での判断を見せず,事件を矮小化した指定管理者の陰に隠れたような行動しか取れないのは,視野が狭く些細な判断しかできない現場任されたままだったからのようです。その些細な判断しかできない現場の人について。

 神戸市の児童館担当・こども青少年課に対する疑問を感じたのは,娘が被害届を出してからです。指定管理者から市への報告は,被害者のケガは軽く治癒すれば復帰できる的な軽易なものとされていたと思います。その報告では想定されていなかった行動が被害届の提出だったはずです。児童館の設置者としてそれをどう判断したかが重要です。被害届提出後に娘への何らかの問合せがあるだろうと期待していましたが,何の動きもありませんでした。私は焦れて直接電話を入れました。現場確認にも出向いている係長が出ましたので,受傷による症状や就職活動・大学院最終年の活動ができない状況,聴力回復の困難や後遺症に対する不安なども伝え,軽くない状況を説明したつもりです。係長からは「指定管理者が対応」との返答もありましたが,指定管理者と異なる見解を持つ被害者が登場した段階の設置者の方針としては,不十分と言わざるを得ません。2017年7月12日の話です。

 神戸市の事件に対する姿勢がより鮮明に示されたのは,この5カ月後の12月19日に行われた記者会見でした。「児童が発達障害なので事件を起こした」「加配をしていたのに事件が起こった」と発表してしまった会見で,被害者と距離を置く姿勢が明確に示されたのです。
 上記発言の問題点を簡単に記しておくと,発達障害と暴力を直結させるという発達障害者の侮辱にもなりかねない発言がされてしまったことについては,情報に対する感覚の鈍さからくるものです。勉強が足りず,指定管理者からの情報を鵜呑みにして情報内容を精査していないことを意味します(「「発達障害だから暴力」の不見識」)。同じ市の組織の中の発達障害者を支援する部署にでも問い合わせれば起こらなかったことで,業務遂行上の視野の狭さがうかがわれます。
 加配に関しては,新聞見出しの「職員加配するも防げず」に見られるように,加配だけでは十分でなかったのに事件が起きた,ということがポイントです(「記者会見で強調された言葉の軽さ」)。課題を持った児童がいるので職員を増やしておいたことを強調していますが,それでも起きてしまったことが問題なのです。記者会見後の全児童館への加配に関連する通知も対策をしたように印象づけるための行為で,問題行動のある児童対応の「質」が問われているのに,職員の「数」で再発防止を打ったかのような見せかけでしかありません。課題の核心がどこにあるかを把握する能力は疑問です。

 記者会見に際しては,被害届提出について「被害届が出されるようなケガではない。被害者が勘違いして提出した」との説明があったという話を聞いています。被害者に会ってもいないのに。事実とすれば捏造で悪意を感じますし,公の立場にある者の発言と考えればかなり問題発言です。被害届提出によって警察は触法調査を行い,暴力行為を確認できたので児童相談所に通告したわけですが,これも勘違いでしょうか。少年の暴力行為をどのように考えていたのでしょう(「改めて加害児童への対応を振り返る」)。これまで何度か同じ局にあるこども家庭センター(児童相談所)の情報も持ち合わせていないことを書いてきましたが(「被害者への神戸市の向き合い方」),触法調査の結果(児相通告)を知られたくないためにぼかした可能性も考えられます。そうだとすればこれもかなり悪質です。彼らの発表した事件内容は,指定管理者に矮小化された事実を,さらにねじ曲げて発表したことになります。児童館がついてこども青少年課がこねた「餅」,食するのはこれまでの価値観に安住する学童・児童館関係者?市の上層部?

 事件報道後に,業界団体関係者による調査取材も行われています。18年2月頃の話です。この取材で被害者のことを尋ねられた課長は「外に出られないと言っているので,被害者の情報は教えられない」と答えたそうです。娘は「外に出られない」と言ったことはないし,最初の事件報道が娘から新聞記者に接触しての結果であることを見ればわかるとおりです。私からすると,事実を隠そうとする行動にしか思えません。この取材者に対しては「今さら終わった話をほじくり返して」的言動もあったとのことです。これまで述べてきた課長の言動を振り返ると,早く終わったことにしたい,早く世間に忘れてほしい,という話でそれが現場指揮官の本音だったのでしょうが,その能力に疑問を感じさせる発言でもあります。

 この後,私たち親娘は神戸市に対して質問状を提出して回答を得る行動に出ますが,神戸市担当に対する不信感は増幅するばかりでした。私は面会や相談などのために時々神戸市を訪れていましたので,そうした中でこども青少年課に直接乗り込んでみようと思い立ちました。不信感の核心にいる課長の顔を直に見てみたい,私の顔を覚えさせておきたいと考えたからです。市役所で面会の用件があったので,その終了後に訪ねてみました。エレベーターホールと執務室をつなぐ大きなガラスの自動ドアを入りました。まばらに職員が座っていたので,立っている通路近くの女性に来意を伝えていると,部屋の奥から来た女性が私の脇を通り過ぎて右方向に向かい,すぐに方向を逆に変えて私の背後を足早に歩いていきました。私が来意を伝えた女性が過ぎ去る女性に「課長」と呼びながら追いかけましたが,通路先のガラス扉を抜けて左側に曲がり,視界から消えました。応対した女性が戻ってきて「課長は会議で」と告げましたので,私は名前と「挨拶に寄っただけ」と話し,「よろしく」の言葉を残した退室しました。たったこれだけの,1,2分の出来事です。側に立っていた娘が1度目の質問状提出の際に課長と顔を合わせていましたので,課長は私が何者かを察したはずです。「覚悟がない」人格を感じました。2019年1月24日午後の話です。